ハロウィンでアニメのコスプレを始めたのは僕が最初かもしれない

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ぼくが20年前にハロウィン嫌いになった物語

091409

どーも、paru@自由人です。

ハロウィンが年々盛り上がっていますね。ついに市場規模ではバレンタインを抜いたとか。

ただ一方で、「ハロウィンなんてクソ食らえ!」って人も多いみたい。

渋谷のスクランブル交差点に発生してバカ騒ぎするコスプレゾンビたちに対して、毎年のように非難の声があがります。

ぼくもそんな1人。

でも、ぼくの場合、もっと昔からハロウィンが嫌いなのです。およそ20年前。あれはぼくが小学校6年生のときでした。

ハロウィンでアニメコスプレを最初にはじめたのはぼくかもしれない

小学校6年生のとき。

ぼくの地元には有名なキリスト教の教会があり、親の「世界を知るために、お前も教会に通っとけ!」という教育のもと、小学校3年生から6年生まで日曜学校なるものに行かされていました。別に親はクリスチャンではありません。ただ、「将来、役に立つからな」という理由。

これが本当に苦痛でした。

別に怪しい団体ではなく、きちんとしたキリスト教の教会で、聖書を読んだり、牧師の教えを聞いたり、お祈りしたり、賛美歌を歌ったり……子供の目から見ても、別に変わったこともなく、参加している人もみんな優しい人たちばかりでした。

が、しかし、小学校6年生のぼくにとって、それは退屈でしかなく、イエスキリストがどうしたという話より、「フリーザが変身した!」「悟空がスーパーサイヤ人になる?」ってことのほうが気になるお年頃。

友達とも遊びたいのに、日曜の朝に起こされて、「主はきませり〜」と意味もわからず歌わせられることは本当に嫌だったのです。

そして何より嫌だったのが、これら一通りの行事が終わった後に行われるクラス活動。

幼稚園生、小学生低学年、小学生高学年、中高生、大人に分かれて、グループワークを行うのです。

担任の先生みたいな感じで、たぶん牧師の卵みたいな大人がつくのですが、ぼくの小学生高学年クラスの担任は、よしこ先生という、たぶん当時25歳くらいの若くて美人な先生。

彼女が今でいう「意識高い系」の走りというか、とにかくいろんなイベントを企画しては、ぼくらにその実行をニコニコした顔で要求してくる。

しかも、高学年クラスには、ぼくともう1人、ヒロシくんという青山学院の小学校に通うボンボンの2人しかいなく、毎回よしこ先生、ぼく、ヒロシくんの3人で過ごす時間は、確実に幼いぼくにトラウマを植え付けていったのでした。

ある時は

「イエスさまの誕生を紙芝居にしてみましょう」

とよしこ先生が言い出して、絵のセンスがゼロだったぼくは震えました。

一方で、「コンクールで入選したことがある」というボンボンの鏡のようなヒロシくんは、小学校6年生とは思えない絵のうまさ。

結局、ぼくとヒロシくんで30枚ほどの絵をスケッチブックに描いていくことになり、奇数ページをヒロシくん、偶数ページをぼくが担当することになりました。

そして、出来上がった紙芝居

それは例えるなら、井上雄彦先生と蛭子能収先生の共作というべき、シュールすぎる出来栄え。

奇数ページではスラッとした聖母マリアが描かれているのに、それをめくると顔と胴体の大きさが同じ、ドラえもんのようなマリアに切り替わる。

それが30枚にわたって繰り返されるのです。もはや今でいうフリップ芸。

ここでぼくは「青山学院に通うようなヒロシくんに、地元の平凡な小学校のぼくは逆立ちしても勝てない」と劣等感を植え付けられたのですが、優しいよしこ先生は聖母のような微笑みで、鬼のようなことを言い出します。

「2人ともよくがんばったね。せっかくの紙芝居だから、みんなの前で発表しましょう」

な、なんですと?

「(あなたはキリストに何を学んでいるのですか?ぼくのひきつっている顔があなたにはわからないのですか?神には見えていますよ?ああ、神様、ぼくをお救いください。アーメン!)」

そんな願いが届くはずはなく、翌週には大人も子供も50人くらいが集まる中で、井上雄彦&蛭子能収による紙芝居が披露され、大人たちの大きな拍手と、子供達による「なんで変な絵が混ざってんの?」「バカな人が描いたの?」という、至極まっとうなご意見をいただきながら、幕を閉じたのでした。

この辺りで、ぼくは本当に日曜学校に通うのが嫌になっていました。でも親は「中学に入ったら部活もあるし通わなくていい、それまでは行っとけ」の一点張り。

紙芝居騒動もつかのま、よしこ先生はまたも鬼のようなことを言い出します。

「ハロウィンに仮装しましょう」

それまでハロウィンという存在は知らなかったし、去年まではそんなイベントはなかった。

よしこ先生がいうには子供たちがお化けの仮装をして、街を歩き、大人たちからお菓子がもらえるイベントだというのですが、ぼくが真っ先に思ったのは「めんどくせー」

なのに、ヒロシくんは「お菓子?面白そう!」となぜかノリノリ。

お前はボンボンなんだから普段からお菓子に困ってないだろ、どうせ毎日、缶に入ったクッキー系の高価なお菓子を食べてんだろ!と思ったのですが、それは言えず。結局、参加させられることに。

3人で何の仮装をしたいかを話し合うことになり、

よしこ先生「ミイラ男とかドラキュラはどうかな?衣装も3人で作りましょう」

ヒロシくん「ぼくは悟空になりたい。スーパーサイヤ人の仮装をする」

ぼく「なんでもいい」

よしこ先生「スーパーサイヤ人?それはお化けなの?」

ヒロシくん「お化けじゃないけど、化け物みたいな強さだよ」

ぼく「なんでもいい」

よしこ先生「じゃあ、それにしよう。paruくんは?」

ヒロシくん「paruはフリーザやってよ。ぼくが悟空なんだから」

ぼく「なんでもいい……フ、フリーザ?えーっ?それは嫌だ!絶対イヤ!」

よしこ先生「フリーザっていうのもお化けなの?」

ヒロシくん「フリーザは強いよ。宇宙最強だよ」

ぼく「でも、フリーザは……」

よしこ先生「強いなら大人たちも怖がって、たくさんお菓子くれるかもね。じゃあ3人で衣装を作りましょう」

こうしてぼくはなぜかハロウィンにフリーザの仮装をすることになった

そもそも、よしこ先生というのは、今思い出すとそうとうな世間知らずだったのではないかと思います。

だいたい、小学校6年生がお菓子につられて喜ぶと本気で思ってた節があり、さらにドラゴンボールのことをまったく知らなかった。25歳くらいで若くて美人だけど、たぶん男と付き合ったこともなかったんじゃないかというほどの純真な人だったのです。

そして、翌週から3人で衣装作りをやることになったのですが、本当に嫌だったぼくは、クラスの時間になるとお腹が痛くなるという技を使い、早退を繰り返すようになりました。

よしこ先生は本気でぼくの体調を心配してくれていたのが罪悪感があったけど、

「私がフリーザの衣装は作っておくから安心してね」

という聖母のような笑顔を見ると、本当に生まれて初めて人に殺意のようなものを覚えたのでした。

ハロウィン当日。

お腹が痛いと逃げ切ろうとしたぼくの仮病は親に通じず

「よしこ先生がお前のために一生懸命に作ってくれた仮装だぞ!先生の優しさを無駄にするな!」

と渋々、教会に連れて行かれることに。

到着すると、ヒロシくんはオレンジ色の道着に黄色いカツラを逆立てたスーパーサイヤ人になりきっていました。

本人は「かめはめ波!」「界王拳!」とすでにテンションが最高潮に達していました。

それを見てぼくは

「(おいおい、ぼくたちは来年から中学生だぞ)」

と思ったのはいうまでもありません。

しかし、ヒロシくんの隣には笑顔のよしこ先生が立っていて

「paruくん、ほらコレ!」

とぼくに発泡スチールと布でできた謎の塊を渡します。

言われるがままにその発泡スチールを身につけて、気がつきました。

「フリーザ……だけど、こ、これは……第三形態だ」

あのコッペパンみたいな頭をした、いちばん醜いやつです。

よしこ先生は一生懸命にドラゴンボールを調べたのでしょう。そして、いちばん禍々しい見た目の第三形態フリーザこそが、ぼくらが話していた宇宙最強のフリーザだと思い込み、一生懸命に仮装を作ってくれたのです。

フリーザ(第三形態)のコスプレを着てみると

ピンク色のタイツ。腕とスネには茶色の甲羅みたいな段ボール紙が貼ってある。股間には黒いビキニの海水パンツ。白い手袋。きわめつけは頭と肩からかぶれるようになっていて、一部が紫色に塗られた発泡スチロール。頭部はまさにコッペパンのように伸びている。

着替え終わり、鏡で自分の姿を見て、戸惑いました。

「なんなんだ、この無駄にクオリティの高いフリーザ(第3形態)は……」

その時、ぼくの中で何かが吹っ切れました。

もう、どうでもいい。

大人たちが一生懸命にぼくのために作ってくれて、それで喜んでくれるなら、ぼくは自分のことなんてどうでもいい。

「すげー、フリーザだ!」

悟空になりきっているアホ丸出しのヒロシくんだって、ぼくのためにフリーザの衣装作りを一生懸命作ってくれたのといいます。

なぜヒロシくんがノーマルなフリーザ、もしくは最終形態のフリーザこそが一般的なフリーザのイメージであることをよしこ先生に伝えなかったのか。よしこ先生が第三形態を作っていることを止めなかったのか。そこは最後まで気にかかりましたが、もはやそんなことはどうでもいい。

吹っ切れたぼくは、ヒロシくんに向かって、

「私の戦闘力は53万です」

と言い放ち、フリーザがピッコロを痛めつけた、指からティティティティとビームを出す技のマネをしてみせると、ヒロシくんは大喜びで、またもや「界王拳20倍だー!」と叫びます。

それを見て、満足そうな笑顔のよしこ先生。

うん、これでいいんだ。ぼくさえ耐えれば、この人たちは幸せになれる。それに、こいつらとはもう今年でお別れだ。

フリーザ(第三形態)のかっこうで街を歩き、家を訪ね、わけもわからず「トリックオアトリート!」と叫びました。

このハロウィンのイベントは小学生低学年の子たちも参加していて、その子達は魔女やドラキュラ、カボチャのお化けといういたってスタンダードな仮装。当時はまだハロウィンはアニコスというのはなかったし、ゾンビさえいなかったように思います。

ぼくのフリーザ、しかも第三形態はあきらかに浮いていました

ただ、「あ、フリーザだ!」「くらえ、かめはめ波!」と戦いを挑んでくるチビッコたちには大人気で、ぼくは内心「(めんどくせー)」と思いながらも「ホホホ、あなたがサイヤ人の孫悟空ですか?」みたいな口調でフリーザになりきり、ハロウィンという人生初、そして最初で最後のイベントを乗り切りました。よしこ先生とヒロシくんの満面の笑みを確認しながら。

……あれから20年、ぼくは一度たりともハロウィンに参加したいと思ったことはもちろんありません。

ただ唯一気になるのは、よしこ先生とヒロシくんは今でもハロウィンを楽しんでいるのか、ということ。

もしそうだとしたら、あの2人の純真な笑顔で、ぼくのような被害者を生み出していないことをただただ祈るばかりです。

アーメン!

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